ジョゼフ・コーネル展 コラージュ・モンタージュ
千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館のジョゼフ・コーネル展に行ってきた。
東京駅からの直通バスを使うと、行きも帰りも一本だけなので、半ば強制的に、自然の中でゆっくりすることになる。
いつも時間の隙間を縫うようにして美術館に行くので、こんな風にゆっくりと絵を見たのは久しぶりだった。
最後は時間を持て余して、常設のロスコ・ルームに行き着いたのだけど、これが思いがけず、面白い体験になった。
ロスコ・ルームは小さな展示室いっぱいに、マーク・ロスコの赤い絵が7点かけられている。
帰りのバスまでの間、この部屋のソファでぼうっとしていたのだけど、ふと俯いたとき、靴がぼんやりと赤く光っていることに気づいた。
照明の色は白なのに、不思議なことだ。
しかし見間違いかと思って、指先を見てみても、やはり薄赤く光っているように見える。
そうして、暫くしてようやく、あぁこれは絵の赤色なんだと気がついた。
まるで花が香りを放つように、この絵もまた、静かに色を発散している。
絵から漂う色に自分が包まれていることに気づいたとき、あたかも作品の中に入り込んだかのような、不思議な感覚を覚えた。
抽象画というのはあまり得意ではないけれど、こういう体験をすると、普通の絵を見るより、よほど面白いのかもしれないと思う。
と、ここまできてジョゼフ・コーネル展について何も書いてないことに気づいた。でももう、終わってしまった展示なので少しだけ。
ジョゼフ・コーネルは、ニューヨークの古書店や雑貨店で見つけたお気に入りの品を、箱に収めた作品で知られている。
喫茶室に作品をモチーフにした水菓子があった。
繊細で美しく、冷ややかで、ほんの少し甘い。
コーネルの作品のイメージにぴったりだ。
沢山の箱が並んだ展示室は、幻想小説にでも出てきそうな秘密めいた雰囲気で面白かった。