美術鑑賞手帳

主に美術館巡りの記録。たまに雑記。メインはインスタ@dillettante.7

松方コレクション展

上野 国立西洋美術館の松方コレクション展に行ってきた。

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日本語で「かなしみ」は、美に通じる言葉だと、言っていたのは、誰だったろう。

今まで色々な睡蓮を見たけれど、こんなに悲しくて美しい、モネの睡蓮は初めて見た。

 

 

日本の人々のために、美術館をつくる。

松方コレクションはその目的のために、実業家の松方幸次郎が、私財を投げ打って蒐集した一大コレクション。

火災や戦争に巻き込まれ、作品は焼失、あるいは散逸し、一時、その夢は潰えたかのように思われた。

しかし戦後、フランスから一部の作品が返還され、ようやくコレクションは、国立西洋美術館という安住の地を見つける。

 

今回の展示では常設のものに加えて、ゴッホマティスなど国内外に散逸した作品が一堂に集められており、松方さんが目指した夢の美術館が、束の間、具現化されたかのようだった。

 

 

そんな数々の作品のなかで、今回、一番印象に残ったのが、モネの《睡蓮、柳の反映》。

 

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これは、睡蓮の大作なのだけど、戦後の混乱の中、画面の上半分が大きく失われ、もはや作品とは呼べないようなものになってしまった。

実際、作品リストからは削除され、長い間忘れ去られていたらしい。

本来であれば、こんなに大きな睡蓮の絵、沢山の人に愛されて、松方さんの思った通りに、その素晴らしさを日本の人に伝えていたはずなのに…

失われた100年を思うと心が痛む。

展示は、一部の欠損もない綺麗な絵ばかりだったのに、それでも、ともすると泣きそうになるぐらい心が動かされたのは、唯一、この絵だけだった。

松方さんは、日本の人々のため、そして日本の画学生のために、このコレクションを作った。

じゃあその頃、日本の画家はどういう絵を描いていたのかな…というところで、美術館巡りは山種美術館速水御舟展に続きます。