松方コレクション展
上野 国立西洋美術館の松方コレクション展に行ってきた。
日本語で「かなしみ」は、美に通じる言葉だと、言っていたのは、誰だったろう。
今まで色々な睡蓮を見たけれど、こんなに悲しくて美しい、モネの睡蓮は初めて見た。
日本の人々のために、美術館をつくる。
松方コレクションはその目的のために、実業家の松方幸次郎が、私財を投げ打って蒐集した一大コレクション。
火災や戦争に巻き込まれ、作品は焼失、あるいは散逸し、一時、その夢は潰えたかのように思われた。
しかし戦後、フランスから一部の作品が返還され、ようやくコレクションは、国立西洋美術館という安住の地を見つける。
今回の展示では常設のものに加えて、ゴッホ、マティスなど国内外に散逸した作品が一堂に集められており、松方さんが目指した夢の美術館が、束の間、具現化されたかのようだった。
そんな数々の作品のなかで、今回、一番印象に残ったのが、モネの《睡蓮、柳の反映》。
これは、睡蓮の大作なのだけど、戦後の混乱の中、画面の上半分が大きく失われ、もはや作品とは呼べないようなものになってしまった。
実際、作品リストからは削除され、長い間忘れ去られていたらしい。
本来であれば、こんなに大きな睡蓮の絵、沢山の人に愛されて、松方さんの思った通りに、その素晴らしさを日本の人に伝えていたはずなのに…
失われた100年を思うと心が痛む。
展示は、一部の欠損もない綺麗な絵ばかりだったのに、それでも、ともすると泣きそうになるぐらい心が動かされたのは、唯一、この絵だけだった。
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松方さんは、日本の人々のため、そして日本の画学生のために、このコレクションを作った。