ギュスターヴ・モロー展
パナソニック汐留美術館のギュスターヴ・モロー展に行ってきた。
キャプションでは度々、作品を宝石に例えていたけれど、本当にそう思う。
モローの作品を鑑賞する愉しさは、職人が技術の粋を尽くした、宝石細工を見る時に似ている。
実際、モローは「夢を集める職人」を自称したそうで、インド、中国、日本などから収集された様々なイメージが、煌びやかな装飾となって、作品を彩っていた。
…と、モローというと、ついその装飾性に目がいきがちなのだが、今回の展示では彼のの優れた色彩感覚も感じることができた。
習作や未完成品が比較的多かったのだけど、何気ない色合いや陰影が本当に絶妙。
装飾が省かれた習作だと、その鮮やかさが一層際立つ気がする。
モローはマティスやルオーを教えたそうだが、そういう美しい色彩感覚は確かに彼らへと受け継がれているかもしれない。
これまで、魔性の女達を描き、自宅に引きこもって暮らした、神秘の画家…というのが、モローのイメージだったのだけど…
この展示では彼の内面にも少し、触れることができて、今までと違った印象になった。
生涯、モローが愛した女性は2人いて、母ポーリーヌと恋人のアレクサンドリーヌ。
二人とも、モローが描いたファムファタルとは真逆の聖女のような女性だったそうだ。
モローが恋人と自分を描いたイラストがあって、それがあまりに可愛らしく、微笑ましかったので、謎めいていた画家の姿が少し身近になった気がした。
パリにあるギュスターヴ・モロー美術館は、
元は画家の自宅だった建物で、3.4階が展示室になっている。1万4千点の作品を収蔵すべく、仕掛け棚などもあるらしい。
扉を開くと、モローの絵が、いくつもいくつも…
壁一面、扉の裏まで、絵で埋め尽くされているそうだ。
まるで宝石箱みたいな美術館。
いつか行ってみたいと思う。