ルート・ブリュック展
東京ステーションギャラリーのルート・ブリュック展に行ってきた。
「お腹の中に蝶々がいる。」と、フランスでは、恋に落ちたようなときめきを表現するらしい。
初めて聞いた時は、随分不思議な感覚だと思ったけど、今なら少し分かるような気がする。
展示室を出てからしばらく経つのに、お腹の中で未だに、小さな蝶が羽ばたいている気がしてならない。
ルート・ブリュックはフィンランドを代表するセラミック・アーティスト。
素敵な作品ばかりだったけど、特に心に残ったのは蝶をモチーフにしたもの。
彼女のお父さんは蝶の研究者だったそうなので、そういう背景もあって、蝶は重要なモチーフだったらしい。
今回の展示のタイトルも「蝶の軌跡」。
確かに、ブリュックの制作スタイルは具象的なものから抽象的なものへと、生涯に渡って大きな変化を遂げる。
くるくると変化するその作風を辿るのは、蝶が自由に飛んでいくのを、展示室の中、ただ無心に追いかけていくようで楽しかった。
ところで実際の蝶の軌跡は蝶道というらしい。
ある種の蝶は太陽光の僅かな移ろいを捉えて、飛ぶのだそうだ。
そういう話を聞くと、晩年、光の表現を追究したブリュックの姿が、光と影の間を縫って飛ぶ蝶に、重なって見えるような気もする。