速水御舟展
紫陽花が咲いているうちにと、山種美術館の速水御舟展に行ってきた。
速水御舟のどこが好きかといえば、まずはその名前から…というぐらいには、この画家が好きだ。
速水御舟は生涯に渡って、自分の絵に型ができることを恐れ、常に新しい挑戦を続けた。
その姿はまるで、流れに乗って進んでいく、美しい舟のようだ。新しい表現を求めて淀みなく進み続け、そしてあたかも先を急ぐかのように、御舟は、40歳の若さで亡くなってしまう。
初期から晩年にかけて流転する画風を見ていると、涼やかな名前と相まって、そんなイメージが思い浮かんだ。
作家は少なからず生まれた時代の影響を受けると思うのだけど、私は特にこの時代の日本画家が好きだ。彼らは、急速に西洋文化が普及した時代に、それに負けないような新しい日本画を作ろうと奮闘した。
西洋文化の流入によって日本画壇が一時、脈が切れたかのような大きな変革を迎えるなかで、御舟の日本画には、やはり古典の伝統的な美が脈々と通っているのを感じる。
写真の《翠苔緑芝》は、紫陽花と兎、琵琶と黒猫の斬新な組み合わせが印象的な作品。特に紫陽花は特殊な技法で描かれていて、不思議な味わいがある。
せっかくなので、訪れるなら、ぜひ紫陽花が美しく咲いているうちに。この作品をモチーフにした和菓子もあって、可愛らしく、おすすめです。