マリアノ・フォルチュニ展
三菱一号館美術館のマリアノ・フォルチュ二展に行ってきた。
これまで200以上の展覧会に足を運んで気づいたことだけど、意外なことに知ってる作家よりも、え、誰それ?みたいな人の展示の方が、楽しかったりする。
あまり知名度の高くない展覧会だと思うけど、今回のマリアノ・フォルチュニ展もその例に漏れず、とても好きな雰囲気だった。
展示室に入ってすぐ、目の前に本物の「デルフォス」があって、思わず見入った。
「繊細なプリーツ」の一言では表現しきれない、本当に美しい襞。
この物凄い襞は人が手作業でつけるのだそうだ。
どこか神秘的な造形美で、それに目を奪われたときの気持ちは、高い技術に感心するというよりもむしろ、植物の自然な美しさに見惚れる感覚に似ているような気がした。
このドレスは、ごく薄い生地がぴったりと身体の線に沿って流れ、女性の姿を優美に見せる。
コルセットを使わなくても、女性らしい美しさを充分に引き出せるとは思わなかった。
こういう開放的な女性服をみると、ウィーンモダン展にあったエミーリエのリフォーム・ドレスを思い出す。
考えてみると、やはり同じ時期なので、この頃の女性の社会進出、それに伴うコルセットからの解放という時代の趨勢が、国こそ違えど、同じような形で表出したのが、こういったファッションなのかもしれない。
そして、エミーリエがクリムトの事実上のパートナーであったように、どうやらフォルチュニにもアンリエットという素晴らしい妻がいたらしい。
優秀な男の影にはこれまた素敵な女性がいるとか、そんな格言があったような気もするのだが、当のデルフォスを発案したのも妻のアンリエットだったそうだ。
フォルチュニはよっぽど彼女を愛していたのか、展示中にはフォルチュニが描いた彼女の絵など、2人の仲睦まじさが感じられるようなものがあって微笑ましかった。
そう、絵も、この人は描いているのだけど、ヴェネチア派に学んだという言葉通り、豊かな色彩が美しく、こちらもまた見応えのある作品で驚かされた。
そしてデザイナー兼画家、というだけでも充分凄いのだけど…
マリアノ・フォルチュニはその他にも版画家、舞台照明家、舞台芸術家、舞台衣装デザイナー、テキスタイルデザイナー、写真家、染色技術の発明家など、八面六臂の活躍をした総合芸術家だったようだ。
ポスターを見て、ただの服飾の展示と思っていたのだけど、全然そんなことはなくて、様々な角度から楽しめる珍しい展覧会だった。
因みに、併設カフェでは、コラボメニューが登場中。
デザートはクレームダンジェという、布を使って作るちょっと面白いチーズケーキ。爽やかな味わいで、この季節にぴったりだ。
このカフェは内装もクラシカルで素敵なので、展覧会の余韻のままに、優雅な時間を過ごせる。
そういえば、コピーに「100年たっても新しい」という言葉があったけど、ちょうど今、同じように100周年を記念して行われている展覧会がある。