葛飾北斎展
森アーツセンターギャラリーの新・北斎展に行ってきた。
今回は、北斎研究の第一人者である永田生慈さんが最期に監修された展示ということで(残念ながら、永田さんはこの展覧会を見ることなく、昨年お亡くなりになったそう…)70年に及ぶ画業全体を見渡せる面白い内容だった。
展示の中心になっているのは、永田さんが収集した2000点の作品。北斎の人生は勿論だけど、その研究に身を捧げた一人の研究者の、人生の集大成を見るような気もして、二重の意味で胸が熱くなった。
春朗、宗理、葛飾北斎、戴斗、為一、画狂老人卍……次々と変わる画号と作風。年老いてなお、磨かれていく画力。その流れがスッと頭に入ってくる。
そして展示量の多さ…。
入ってから出るまでに見た絵、そういえば全部同じ人が描いたのか…と振り返ると、ちょっとびっくりしてしまう。しかも、こんなの全然一部分に過ぎなくて…北斎は生涯で3万点の作品を残したとか言われているそうだ。
昔、国立新美術館にミュシャの《スラブ叙事詩》が来たとき、チェコにはミュシャみたいな素敵な画家がいて良いなぁ、と羨ましく思ったことがある。民族の歴史を伝える、20点の超大作。
だから、去年は、こんな美しい作品を捧げられたのはどんな国かしらと、はるばる飛行機にのって、チェコに行ったのだけど…
それで言うと、今回の北斎展をみて私は、日本には北斎がいて良かった…!と思ったのだった。
こんなに世界中で知られていて、かつ日本の美意識と民族性を伝えることができる画家は、ほかに居ないだろうから。
海外でも展覧会が開かれ、沢山の出版物が刊行されて、今一層の注目を集めている…
というかそもそも、ミュシャのアールヌーヴォーだって、元を辿れば北斎に行き着くのだ。
北斎すごい。
ミュージアムカフェにコラボメニューがあって、思わず注文してしまった。
地上52階から東京の街並みを見下ろすと、
北斎に、貴方の描いた江戸は、今はこんな風になったのですよ、と見せてあげたくなる。
そうしたらきっと目を輝かせながら、東京タワーとかを描いてくれるんだろうな、なんて、そんなことをぼんやり考えつつ食べた。