東山魁夷展
絵を観て泣いたことはあまりないのだけど…
去年、東山魁夷の絶筆《夕星》をみて、何だか泣きそうになって、それは流石にまずいと、慌てて暗い障壁画の部屋へ移動したことがあったのだけど、何でそんな風に思ったのか、漸く腑に落ちた気がしたので、少しだけ…
若くして、父、母、弟と死別した作者を暗示するような4本の木。夜空に浮かぶ一粒の星。
とても美しい、静かな情景で、これを描いた時には、既に死を予感していたんだろうか。
言葉にするのは難しいけど、この絵を観たとき、ようやく自分もそちら側に行ける、とでもいうような、安堵の溜息が聞こえた気がして…
その時はよくわからなかったのだけど、先に逝った人達と、気持ちだけはもう既に共にあるかのような絵だったから、
恐らくこの人がずっと持っていたのであろう、寂しさや孤独みたいなものを感じて、泣けてしまったんだと思う。
死の予感が一層の美しさを加えているように思える、こういう作品を観ると、
川端康成が『末期の眼』の中で語った「すぐれた芸術家はその作品に死を予告していることが、あまりにしばしばである。」という言葉は、哀しいけれどまさにその通りだな、と思う。