美術鑑賞手帳

主に美術館巡りの記録。たまに雑記。メインはインスタ@dillettante.7

東山魁夷展

絵を観て泣いたことはあまりないのだけど…

 

去年、東山魁夷の絶筆《夕星》をみて、何だか泣きそうになって、それは流石にまずいと、慌てて暗い障壁画の部屋へ移動したことがあったのだけど、何でそんな風に思ったのか、漸く腑に落ちた気がしたので、少しだけ…

f:id:dilettante7:20190722181844j:image

若くして、父、母、弟と死別した作者を暗示するような4本の木。夜空に浮かぶ一粒の星。


とても美しい、静かな情景で、これを描いた時には、既に死を予感していたんだろうか。

言葉にするのは難しいけど、この絵を観たとき、ようやく自分もそちら側に行ける、とでもいうような、安堵の溜息が聞こえた気がして…


その時はよくわからなかったのだけど、先に逝った人達と、気持ちだけはもう既に共にあるかのような絵だったから、

恐らくこの人がずっと持っていたのであろう、寂しさや孤独みたいなものを感じて、泣けてしまったんだと思う。


死の予感が一層の美しさを加えているように思える、こういう作品を観ると、

川端康成が『末期の眼』の中で語った「すぐれた芸術家はその作品に死を予告していることが、あまりにしばしばである。」という言葉は、哀しいけれどまさにその通りだな、と思う。